里山の秋 茅ヶ岳 1703m 2006/11/4

− 素晴らしい黄葉の中、深田久弥終焉の地を訪ねる −

紅葉前線が関東の低山にまで下りてきた。

もみじ狩りを楽しもうと、東京近辺の山に出かけようと計画をする。

深田久弥終焉の地として有名な茅ヶ岳にバスツアーを利用して出かける事にする。

茅ヶ岳は姿が八ヶ岳に似ている為ニセ八ヶ岳とも呼ばれている。

茅ヶ岳近辺の地図

7時30分新宿発のバスは満員。

添乗員の外に山岳ガイド2名が付いて総勢46名の大パーティだ。

中央高速の渋滞は大したことが無く、韮崎IC経由で深田久弥記念公園の駐車場に着いたのは10時丁度。



駐車場には既に多くの車が駐車していた。

例によってストレッチを入念にして出発。

10時12分

「武田の里にらさき」の綺麗な看板が出来ていた。



43名を2班に分けそれぞれを山岳ガイドが先導する。

そして最後尾にツアーコンダクターが付くという、一般登山客にとってはとても迷惑な長蛇のパーティとなった。

私達はB斑でベテラン(老人)の山岳ガイドが付いた。

登山口の標高は945m。1703mの茅ヶ岳まで標高差750m程。

カエデの紅葉が始まっていた。



最初は軽四4駆なら走れそうな緩やかな道を行く。



ウリハダカエデの大木が多く綺麗に色付いている。

登山道は黄色の絨毯になっている。

ウリカエデもあって赤い葉も混ざっている。

樹皮が暗緑色でウリに似ている所からこの名が付いたとか。


ウリハダカエデの葉



10時37分林道を横切る。



傾斜が感じられる様になるとカラマツの黄葉が目立つ様になる。



アカマツ林の中で早くも休憩。

山腹を見上げると素晴らしい紅葉。



ブナの黄葉が残っていて赤みがかった色が綺麗。



茅ヶ岳にはリョウブの樹が多い。

未だ緑色の残った黄葉が陽に照らされて新鮮な感じがする。



リョウブの葉



足下にはカラマツの落ち葉が絨毯の様でクッションが良くて歩きやすい。



ゾロゾロと金魚のフンの様に続く我らがパーティ。

岩がゴロゴロ出始め、傾斜がやっと登山道らしくなる。

11時20分女岩に着く。

予定より20分ほど早く着く。良いペースだ。



これが女岩。

何故女岩と呼ばれるのかは、口には出してはいけないそうだ?

ここは、昭和30年頃には簡易水道の水源だった様で、今でも水が出ている。

冷たくて美味しい水だった。

岩がモロいのか、岩の周りにはロープが張られ、近づけないようになっていた。



女岩は水がわき出ているせいかモミジが多く赤く色付き始めていてとても美しい。

二本ストックの男性が下りてきてやたらと話しかける。

「頂上から25分で走って下りて来た、これからまた次の山に行く」

私達のツアーのバッチを見て「ワシは団体登山なんかに絶対行かん大嫌いだ」と大声で言う。

そりゃそんな無神経な態度ではツアーには参加できないだろうね。



11時30分女岩出発。

今までの緩やかな山道がうって変わって厳しい岩の登りとなる。

この山は隣の金ヶ岳と共に古い火山で安山岩マグマが多く露出している。



ゾロゾロと46名が岩肌を登って行く。

この頃になると下山客も多くなる。

さぞ迷惑な事だったろう。



岩場を過ぎると快適な道となるが直ぐにまた岩場となる。



リョウブに混じってコナラの黄葉も多くなる。



やがて木々が葉を落としている地帯まで来ると何故か私達B斑がずいぶん遅れ出す。

アレッと思ってよく見ると何とベテランガイドが一杯一杯になっている。

今日のツアーは初級者コースなのだが、参加者は皆さんしっかりとした足を持っており

ばらける事もなくグイグイ登っている。

このペースに山岳ガイドの足が付いていかない。

みんな心配して上を見ながら登っている。

12時6分稜線に出る。



A斑は先に進んだが我がB斑は此処で休憩。

此処は立木が邪魔をして景色が見えない。

後から来た登山者が「向こうのピークには眺望の良い岩のテラスがありますよ。休むのなら此処より..」

「そう言っても私達はツアーなので勝手には進めないんですよ」と返事すると苦笑い。

「ガイドがバテテ..」とは言えない。



少し休憩して更に少し登ると、見晴らしの良い所に深田久弥さんの終焉の地の慰霊碑がある。



正面に深田久弥選定日本100名山の金峰山2599mとその左に同じく100名山の瑞牆山2230m。

この素晴らしい眺望を眺めながら亡くなったのだろうか。



此処からは岩の狭い登山道を登る。

眼下には立派なビニールハウス?農場だろうか?



二カ所ほど眺望の良い場所がある。

北東の奥秩父方向は霞んではいるが素晴らしい眺望。

富士山方向は真っ白で何も見えない。



岩陰には深田久弥が亡くなる寸前に見てみたいと言ったイワカガミの紅葉。

途中で二人の小さな女の子の下山者があり岩を下りられなくてしばし渋滞。

やっと前の組に追いついた我がガイドは「止まらなくても横の岩を登って行ったら良いんだ」

「何で渋滞するんだ」なんて言っている。

渋滞しなけりゃドンドン離されるのにね。



騒がしくなってくると頂上に到着。

頂上付近の樹木はみんな切り開かれてとても見晴らしが良くなっている。

喜んで良いの?

我がパーティ全員とハイタッチをするガイドさん。

やはり変わった人だなあ..



頂上はA斑+先着者で満員。

12時34分山頂着。約2時間20分掛かっている。

隙を見て記念撮影。



頂上から金峰山方向。

手前右の特徴ある山は曲岳、黒富士か?



直ぐ北側は深く切れ落ちそして厳しそうな岩壁の見える金ヶ岳1764mへと繋がっている。

此処から一時間であの頂上まで行く事が出来るそうだ。

普通個人で来る時は此処から金ヶ岳に行き稜線を左に下り、東京大学の宇宙線測定所方面に下りる。

目の前の魅惑的な金ヶ岳の姿によだれを流しながら、みんなと離れて一寸怖い岩のテラスで昼食。

金ヶ岳もやはり火山で南峰と北峰の間には爆裂火口があると言う。



金ヶ岳の左肩向こうには本物の八ヶ岳がそびえているはずだが、雲に隠れてぼんやりと山陰が見えるだけ。

樹木を切った後から芽を出した柏の葉の紅葉がまぶしい。



食事を終えても我らがパーティは下山する雰囲気ではない。

人数が多すぎて下山時刻などの連絡事項が伝わってこない。

仕方がないので景色を見て過ごすが、よく見えるのは北東方向だけ。



樹木は切り開かれているものの、西も南も南東も全く見えない。ガスの中。

本当なら南アルプスがドデ〜ンと前にそびえ南には冠雪の富士山も見えるはずだったのに残念。



先ほど逢った女の子と同じぐらいの年齢のボクちゃん二人。

お父さんと一人の子供は弁当に食らいつき、お母さんともう一人の子供は食欲なさそう。

兄弟でどちらの親に似ているか?

なんて観察している内に下山時間。

13時8分。

下山路は二つあり千本桜へ防火帯を下りていくのかと思ったが、登りと同じコースを下りると言う。

ツアーだから従うしかない。



岩の下りは気を遣う。

きゃ!とか言う声が何回か聞こえ渋滞となる。

後ろの女性が岩の上の落ち葉で滑り二度転んだ。

転ぶとすごい勢いで滑ってくる。

灌木があるので直ぐ止まるが、前を下りていると怖い。

家内は一度滑ったが上手く両足でウルトラC(ふるっ−)着地。

途中で雲の上に富士山の頂上が微かに見えた。

冠雪しているのが見て取れるが写真には写らない。

まあ、これから冬になればいくらでも素晴らしい富士の姿を見る事が出来るだろう。



岩場を過ぎるとみんな早いぞ!!



逆光の紅葉が素晴らしい。



紅葉スポットで一寸一枚。



14時46分登山口に下りてきた。

1時間半ほどで下りている。

ツアーは初級といえども下りは早い。

右に曲がり深田久弥記念公園に向かう。



百の頂に 百の喜びあり  良い言葉だなあ。



公園の奥には、まんじゅう峠の看板が..

いったいどんな峠なのか興味が湧く。

調べてみると弘法大師伝説にたどり着く。

こんな所にも弘法大師かと改めて彼の偉大さに気が付くのかも..

弘法大師が峠の茶屋で饅頭を所望したところ茶屋のばばあがこれは石の饅頭だから食べられないと言ったら

饅頭が本当に石になったという伝説がある。

伝説にかかわらず饅頭石がこの近辺にはあるらしい。




何でこんな所に記念公園を作ったのかと思って振り向くと疑問が解けた。

目の前に茅ヶ岳の美しい姿を見る事が出来る。

駐車場や登山口からは、この姿を見る事は出来ない。

下山後登山口直ぐ近くのリゾート地にある桔梗温泉に立ち寄る。

柔らかな泉質の温泉にゆっくりと浸かりビールをぐいっとやる。

幸せな一時。

老犬を連れた近所の老人と立ち話したり、老犬と戯れたりしてのんびりと過ごす。

その後高速に乗るが小仏トンネルでいつもの渋滞。

その後調布手前で事故渋滞。

それでも21時には新宿に着き22時には自宅に着く。

750m位の直登だったが、最近の低山ぼこぼこ登山の欲求不満を解消してくれた。

これからは奥多摩や高尾の紅葉も楽しむ事が出来るだろう。