里山の春 高越山 1123m 船窪 2007/5/20
ウツギ類の花の盛りとハナイカダ 船窪のオンツツジは8部咲  

ネット仲間のLiveNatureさんが雲早山〜高丸山をピストン縦走されたとお聞きした。

高丸山も雲早山も大好きな山。

今の時期はヤマシャクヤクやブナの新緑が素晴らしい事だろう。

早速縦走記録を調べると頂上間縦走は4時間半とある。

これなら何とかなると準備する。

しかし、よく調べると何か変。

レポートの縦走記録は片道縦走の時間だった。

往復だと倍掛かるではないか。

往復縦走で8時間以上掛かる事になる。雲早山への往復2時間を加えるとなんと10時間以上の行程だ。

これでは私達軟弱コンビでは無理。

急遽未だ登っていない烏帽子山へと変更。

所が朝起きて車に乗ろうとすると燃料が残り少ない。

落合峠まで行くには不安がある。(あんな所で燃料切れしたら目も当てられない)

再度簡単な山、お高越山に変更。



この時期なら船窪のオンツツジも咲いているだろう。

6時に家を出発。

山川に向けて走ると何とセルフ24時間のスタンドがあった。

此処で給油して烏帽子へ行こうかとも思ったが資料は家に置いてきた。

予定通りお高越山に向かう。

(この時烏帽子へ向かっていればREIKOさんにお会いできたのに残念)

お高越山は別名「阿波冨士」と呼ばれている綺麗なお山。

大滝山や龍王山などの阿山山脈から吉野川の向こうに美しい姿を望む事が出来る。

西の吉野山である意味の「西山上」の名とともに巨刹の名にふさわしい偉容を誇っている。

この近辺を千数百年前に開拓した「忌部氏」の氏寺でもあり、近隣の人々がもっとも大事にしている象徴の山である。

徳島では「おうこつさん」と呼ばれて親しまれている。

高越寺は修験道の祖・役行者小角(えんのぎょうおづぬ)が七世紀に建立したと伝えられ、

弘法大師が801年28才の時にこの山で修業されたらしい。

本尊・蔵王権現(高越大権現)、脇仏(千手観音菩薩)であり、

毎年8月18日に十八山会式が盛大に執り行われている。




高越山登山道概念図

高越山への登山道はいくつもある。

昔からの表参道(黄色)そして穴吹の空野からの道(青色)。少年自然の家からの道(ピンク色)

一番簡単な船窪からの道(自動車道が直ぐ近くまで通っている。)

今日はふいご温泉からの電力鉄塔保安路からの道(赤色)を行く事にする。



ふいご温泉を過ぎ高越橋を渡ると駐車スペースがあるが今日は産直市のテントが設営されていて停められない。

登山口を通り越して道端に停車。

少し引き返してガードレールのある鉄塔保安路へと向かう。



奥野井谷川沿いにはウツギの花が咲き誇っている。丸い蕾が可愛い。

登山口には小さな標識。

7時7分登山開始。

標高100m。

此処から頂上まで標高差1000m余り。



最初は薄暗いゆるやかな道を行く。

背の低いコガクウツギが道の両側に咲いている。



左の花はウツギに似ているが少し小さい花を付けている。何の花だろうか?



数日悩みましたがやっと解りました。

これはエゴノキのようです。

長い花柄があって垂れ下っているのが解ります。

まん丸蕾が可愛いです。

花弁は5枚有る様に見えますが、合弁花です。

粘りがあるのでワカン等に利用されます。

サポニンを含むので有毒です。

暗い樹間でとても綺麗で目立ちます。

花期が短く頂上付近では殆ど散っていました。

43番鉄塔に着く。



直ぐに舗装路に出て右に高越山へ4.5qの看板。

7時22分。

看板から左へ曲がり更に舗装路を行くと行き止まり。

行き止まりの少し手前を左へと登って行く。

そのまま真っ直ぐ行っても踏み跡はあるので間違えない様に。



美味しそうなイチゴの実が沢山ある。

44号鉄塔で靴のヒモを結び直ししばし水分補給。

鉄塔の向こうに山川の町と吉野川その向こうに阿讃山脈。



アザミの花が鮮やか。



ウマノアシガタがテカテカ光って咲いている。



ツツジが所々に咲いているが花は少ない。



サルトリイバラに実が沢山なっていた。

あんな山の上にも人家がある。



大滝山が右手に見える。

花の中心に黄色の輪があるのはマルバウツギだが、この葉は三つ葉ウツギの葉みたい。



ツツジやウツギなどの低木の茂る中を行く。



所々で眺望が開け吉野川が見える。



タツナミソウは終わりかけ。葉が硬く黒くなっている。

右は萼片が2〜3枚なのでコツクバネウツギ。



参考:ツクバネウツギは5枚。



高越山まで3q。

此処のマルバウツギは本当に葉がまん丸。



突然林道に出る。

左へと上がっているのでつい左へと行きたくなるが、ここは右へと少し下る。

道端には真っ赤なタニウツギが沢山植わっている。



桜も沢山植わっていて可愛い実を付けている。



大滝山から竜王山そして大川山等の阿讃山脈が見渡せる。

大滝山には修験寺院の大滝寺があり忌部修験の高越寺と対立したそうだ。



少し行くと表参道からの道がある。

覗岩の看板。



左へ少し上がると高越山が正面に見えて立派な石の鳥居がある。

此処が中の郷。

昔は集落があったそうだ。

大きな駐車場があり車が二台停まっていた。



中の郷には新しい庵があり池もある。

この池が万代の池

水が少なくなっていて真っ黒のオタマジャクシがウヨウヨいた。

錦鯉か゜泳いでいるのに驚いた。

昔の何かの設備が放置されている。



登山道入り口には古い木に何か書いてある。

「神武天皇即位・・・朝臣天富命日鷲命の・・を率いて ・・ この地に来たり・・」と読める。

天の岩戸の時活躍した日鷲命は紙の始祖神でもあり忌部族の始祖神でもある。

貞光に木綿麻(ゆうま)川(貞光川)があり(木綿麻温泉がある)、このお高越山も昔は木綿麻山と呼ばれていた。

現在でも地名は山川町木綿麻山だ。

麻と忌部族の関係は有名だが麻を加工した木綿(ゆう)は、昔神に捧げる幣の材料として使われていた。

その後木綿は紙の弊に変わっていった。

その為日鷲命は阿波和紙の始祖神としてもあがめられている。

日鷲命の義兄弟の太玉命の孫が天富命で日鷲命の子孫(阿波忌部)を引き連れて房総などに進出していった。

この話は昔から良く聞いていたが実感としてはなかった。

しかし先日房総を旅して、今でも房総の人達が阿波の忌部族を祖先として祀っている事を知り

にわかに実感が湧いてきたものだ。

その忌部族が房総そして関東に進出していったのが神武東征の話だという説もある。

その日鷲命を祀っているのがこの高越山らしい。

また、古事記の神話のイザナミをこの奥の院に祀って有るとも言われている。

何処まで本当か解らないが夢のある話だ。

十九丁の丁石がある。



次第に天気が良くなり、時々差す陽の光で新緑が輝く。

コガクウツギが目立つ様になる。



特徴の有る葉(ボタンに似ている)のキツネノボタン。

中の郷から先に林道が延びていたが何と墓地らしきものか大規模に造成されていた。

家内が「今ならお好きな場所が手に入ります」との宣伝を見たという。



十七丁の丁石

フタリシズカが咲いていた。



左は沢山生えていたが名は解らない。

右はホソバテンナンショウ?



?ホトトギスが沢山あるが花が咲かないと何ホトトギスかは解らない。

十三丁丁石



ナルコユリはもう実になっていた。



他の山ではもう花期の終わっていたヤマルリソウが咲いていた。

段々巨木が多くなる。



高越山へ1500mの標識と11丁の丁石



踏ん張って歩いているとハナイカダ発見。

黒くなった実は何回か見た事があるが花の咲いているのは初めて。

ふと周りを見ると一杯咲いている。

これは雄株かな?



この糸が絡み合った様な花は以前見た事があるが名前が思い出せない。



突然お年寄りがすごいスピードで追い抜いていった。

何か苦行の様に顔をしかめて登って行く。

修行しているのかな?

モミやツガの巨木がある。

流石古い参道だ。



不動尊?が祀られていた。

頂上近くなると朽ちた大木が多くなる。



山頂まで1000m付近からホウチャクソウが沢山咲いている。



エンレイソウはもう花を落としていた。



左の花は?コゴメウツギに似ているが?ウワバミソウかな?

カンアオイの一種?が沢山葉を付けている。

葉をめくってみたが花は見あたらない。



朽ち果てた休憩所に着く。

9時16分



左に倒れ落ちた建物がある。

これが女人小屋だろうか。

この山は女人禁制の為女性は此処から先には行けなかったそうだ。



立派な煉瓦の赤門

かっての女人禁制の結界



赤門の上には行者入り口がある。

左へとロープが続いている。

悪人だと通れない岩があるそうだ。

行場には寄らずに真っ直ぐに行く。



古い石の鳥居

高越大権現の右の西山上とは西の吉野山の意味だ。

鳥居の脇にも倒壊した建物が有る。

女人入山禁止の監視小屋だったそうだ。



タチネコノメソウやコチャルメルソウが咲いているが暗くて陰気。



ヤマルリソウが実を付けていた。

階段下から山門を見上げる。

威風堂々とした立派な山門だ。



山門に9時38分着。

登山口から2時間半ほど掛かっている。



立派な山門をくぐるとまた鳥居がある。

正面は高越寺なのに鳥居とは?



鳥居には高越権現の額がある。

明治に無理矢理神社と寺を分けられた時の混乱の名残だろう。



余り大きくないが荘厳な高越寺。



高越大(蔵王)権現が祀られている。



山川の町や吉野川が眼下に見える。



シャクナゲが沢山咲いていて綺麗。



スズランが沢山植えられていた。





しばらく休憩して頂上へ。

吉野川上流を眺める。

穴吹の辺りか?



竜を祀って有る岩屋



突然目の前に岩がありよじ登る。



この道は初めて通る。見晴らしの良い所がある。



遠くに朱色が鮮やか。

船窪のオンツツジだ。

見事に咲いている。






眼下に穴吹から塩江に抜ける道と曽江谷川

弘法大師の像



山頂標識で記念撮影。



穴吹の町と吉野川に掛かる穴吹橋とふれあい橋

向こうはうだつで有名な脇町。



カキドウシが咲き乱れる中を下ると高越神社。




神社下の急な階段にはクルマムグラ。

未だ蕾



ミヤマハコベが群生。

あれっ!奥の院に行くのを忘れていた。

イザナミをお詣りしたかったのに。



階段を下りて直ぐに船窪に向かう。

10時12分。



千年杉、天狗杉とも呼ばれる燈明杉



山裾にはムラサキサギゴケが群生



シロモジの素晴らしい新緑の中を行く。



クルマムグラが群生。

小さな花だが群生すると綺麗だ。



15分ほどで駐車場。



未だ桜が咲いていた。



いつの間にか車道が舗装されていた。

車道の両側には白いマーガレットが沢山植えられている。



立石峠10時42分



ズミだろうか?薄いピンクの蕾が可愛い。



船窪10時55分着。



流石、国指定の天然記念物のオンツツジ。

素晴らしい。



未だ蕾が多く満開はこの週末の辺りだろう。



コゴメウツギは未だ蕾。

ぐるっと一周をするが北側は未だ殆ど咲いていない。

一周してからお昼にする。

売店があってビールを売っている。

飲みたいが交通安全週間。我慢する。



白いチョウチョがひらひらと舞っている。

アゲハチョウの仲間でウスバシロチョウ

初めて出会った。

此処のは図鑑よりも少し大きくて白色が濃い。

11時43分出発。

ホウノキの大木がある。



クヌギとコナラの若葉が綺麗。



ミヤマヤナギは少し綿毛を出していた。



先ほどは気が付かなかった龍厳の欅



陽が照って新緑が素晴らしい。



白いムラサキサギゴケと行場の鎖



シャクナゲを見ながら山門に着く。

12時36分。



鐘楼と山門の仁王さん



役行者の像と道場。先週此処で護摩があったそうだ。



トイレによって下山開始。

12時55分。






先ほどのハナイカダの場所に来てじっくりと見る。

葉から花が咲いている様に見えるが、注意してみると葉柄から花までの葉脈は太くなっており、

花柄が合着したものであることがわかる。

つまり合着した花柄から花が咲いているのだ。



ツクバキンモンソウとシロバナニガナ

花を撮影しながら下りていると後ろから賑やかな四人組の男性が下りてきた。

中に一人タダ者ではない!と感じられる人が居た。



中の郷には梨の大木があるという。

探していたら先ほどのただ者ではない人が「イチリンソウ見ましたか?」

と聞いてきた。

イチリンソウ?見かけに寄らず...よく見ると仏さんの様な笑顔をしている。

お弁当お弁当と騒いでいる人が居る。

どうもお弁当を忘れて登ったらしい。

そう言えば私も伊吹山に弁当を忘れて登った事がある。

あれは惨めなものだ。

皆さんは中の郷から車で帰るらしい。

お別れして鉄塔保安路を下る。

後からエントツ山さんの掲示板で連絡をいただきました。

紫雲さんの掲示板などで良く名前を拝見する鬼手物心さんでした。

お医者様なのかな?



晴れてきたので鉄塔から見る吉野川が美しい。

コナスビの花が咲いていた。



ひらひらとやって来たのはアサギマダラ。

寒い国からようこそいらっしゃい。

この個体はオレンジが鮮やか。



後はのんびりと下る。

青空に山並みが美しい。



此処でもヒメハギが咲いている。

徳島にはヒメハギが多い。



15時丁度駐車場着。

ウツギの花を写していたら首筋に毛虫が!

払い除けたが首筋が真っ赤になる。ムヒを塗りたくる。

ビールが飲みたいので、ふいご温泉にも寄らず家に飛んで帰り風呂に入る。

陽のあたる湯船でゆっくりしビールをグビリ最高の気分。

久しぶりの高越山と船窪のオンツツジを堪能した一日だった。