里山の秋 志賀山 裏志賀山 2006/10/09

− 思いがけない暴風雨 ホテルで楽しんだ「日本の名峰」 やっと登った志賀山 −

四国の仲間から、石鎚山の素晴らしい紅葉を楽しんでいるとのレポートが届く。

私達は、一寸物足りないが志賀高原の紅葉を見に行く事にする。

志賀高原は2000mチョイの山や沼が多いのでルートを色々考える。



山歩きのルートを色々考えるのは楽しい。

一日目の午後は、バスで白根山まで行って前回パスした本白根山に登ろう。

二日目はメインコース。熊ノ湯から前山経由で志賀山、裏志賀山に登り、コバルトブルーの大沼池を見て

四十八池湿原を通り鉢山から横手山まで行こう。

三日目の帰りは、白根山から三角錐の独立峰の様に見えた笠ヶ岳に行こう。

熊ノ湯の緑白色の源泉かけ流し濁り湯も十分に楽しもう。

と言う訳で計画はまとまった。

金曜日の東京はものすごい風と雨。

しかし夕方からは収まってきた。

太平洋沖で発達していた低気圧も北海道沖へと去っていった様だ。

天気予報を見ると長野県北部はまずまずの天気。

特に日曜から月曜にかけては快晴の予報。

所が朝起きて天気予報を詳しく見ると、志賀高原のある長野県下高井郡山ノ内町の付近は

日曜まで小雨が残る様だ。長野市はお天気マークなので何とかなるだろうと家を出る。

キンモクセイの甘い香りが漂っている。

昨日の風で花が散って道は黄色の絨毯を敷き詰めた様だ。



新宿から8時前に出発。



関越道から上信越道に入ると、右には榛名山と思われる丸い山?

左はギザギザの厳しい山容の妙義山。そして碓氷軽井沢の手前で一般道に出る。



皇室御用達の有名な「峠の釜飯」で昼食の弁当を積み込む。

中軽井沢の真ん中を北上し鬼押し出しの横を通過してドンドン行く。

草津の温泉街で左折して白根山へと高度を上げていく。

添乗員が「昨日までは天気が悪かったけど、今日からは天気は回復。楽しみですね」

等とマイクでしゃべってるが、白根山のゴンドラ乗り場を過ぎた辺りから様子は一変する。



山肌に硫黄の岩が目立つ所まで来ると雨がかなり強くなる。白根山の湯釜の駐車場では既に大雨。

そして横手山への稜線にさしかかると、ものすごいガスと風と雨。

窓の外は何も見えない。

風で車体が大きく揺れる。

突然車体が浮き上がる感じがしたと思うと「ガッシャーン」と大きな音がしてバスは急ブレーキをかけた。

何事かと思ったが、なんて事はないバスのサイドミラーが風で折り畳まれてしまっていた。

(上右の写真は帰りに写したもの)

電動で元に復帰したものの添乗員は舞い上がってしまっている。

「大丈夫です。無事にホテルまで到着できると思います..?」

「もしバスが動かなくなっても通りすがりの車でホテルまでお送りする様に手配します..」

等と訳の分からない事を口走っている。

添乗員がうろうろするほど、ガスで視界は遮られ風の吹くたびに大きく車体が揺れる。

それでも横手山を越えて下り始めると風雨は収まってきた。



一時半頃熊ノ湯の硯川ホテルに到着。

とりあえず部屋にはいると広い素敵な和室。

計画では、目の前のバス停から白根山まで行って本白根山に登る予定。

しかし窓を開けると横殴りの雨が降っている。

一瞬で諦めて、温泉に飛び込む。

素晴らしい露天風呂が付いているが暴風雨の中では5分も入っていられない。

雪の露天風呂なら良いけれど暴風雨はダメだと改めて認識した。

部屋に帰ると丁度BSで「日本の名峰」を放映していた。

爺が岳や鹿島槍ヶ岳などを楽しんで、それでも時間が余ってまた温泉に入り地酒を買ってきて

時間を過ごす。

その内にすごく寒くなった。スチーム暖房が止まってしまっている。

フロントに文句を言うと、思いがけない急な寒さでボイラーの調子が悪いとか...

やっと夕食の時間となり、豪華な料理と地酒をしっかりと楽しむ。

また温泉に入り一人でチビリとやっていると、布団を敷きに来た地元のおばちゃんが

「最近熊が良く出るのでメインルート以外は歩かない様に」と言う。

ホテルの支配人に明日の予定を言うと、「四十八池湿原から横手山は熊が出だしてから殆ど誰も行かない」

おまけに笠ヶ岳も登山コースは熊の巣があるので林道経由で行けと言う。

おまけに熊の罠が一杯仕掛けられているらしい。

ほんまカイナ?と思うが、熊に囓られては勝ち目はない。

ましてや熊の罠に引っ掛かったりしたら...

そういえばどこかの人がどこかの山でイノシシの罠にかかっていたなあ??

明日は四十八池湿原から大沼池経由で一周するコースに変更する。

この時はまだ当然明日は曇りのち晴れで気持ちよい歩きができると思っていた。

寝る前にニュースで白馬等で遭難事故があったと言っていた。

標高1700mのこのホテルでこんな暴風雨と寒さだから、

3000m級の山の稜線はとんでもない風雨と寒さだと思った。

北海道の東に行った低気圧が以上に発達して来たから寒気が入ってきているらしい。

960ミリバールと言うから強烈な台風並みだ。

遭難した人は大丈夫かなあ?と思いながら就寝した。

夜中ボイラーが止まると寒くて、何度も目が覚めた。




朝寒くて早く目が醒めた。

温泉にはいると、何と言う事相変わらずの暴風雨が続いている。

食事を終えても収まらない。

しかし天気予報では長野は晴れ。

新潟との県境では所により雨と言っている。

どうも下界は晴れている様だ。

しかし日本海から吹き抜けた雨風は、この志賀高原の北西の斜面にまともに吹き付けている様だ。

10時を過ぎると一旦雨が収まった。

何人か登山者が登って行く姿も見える。

フルコースは無理かも知れないが志賀山でも登ろうと用意する。

弁当をもらって外に出ると風とガスはあるが何とかなりそう。



地図を見ると志賀山までは3時間ほどで往復できそうだ。



リフト乗り場に行くと当然未だ止まっている。

国定忠治の隠れ岩の石碑の前のゲレンデの中を登って行く。

しかし、20分も歩くと視界は数bとなり吹き飛ばされそうな風。

おまけにまた雨も降ってきた。

朝登っていった人がよろけながら降りてくる。

雨が顔にいたいほど当たる。強烈に寒い。

前山の頂上手前で正面に風を受けて進めない。

ここで、きっぱりと登山断念

転がる様に下山し、風呂に飛び込む。

温泉に入っても暖かくならない。

部屋に帰り布団を引きずり出して、雪んこ状態で弁当を食べる。

また「日本の名峰」で甲斐駒ヶ岳や赤岳をじっくりと見て、

元サッカー選手が日本橋から京都まで東海道を歩くレポートを2時間ほど見て

未だ時間を持て余し温泉に入りまた地酒を飲み、夕食後また温泉に入り、地酒を飲み

ふてくされて寝てしまった。

一寸飲み過ぎかなあ〜



朝起きると、何と素晴らしい天気。

もう山に出発している人達がいる。

清々しい高源を散歩する。



昨日まではガスで何にも見えなかった前山が目の前に美しい姿を輝かせている。



7時半からの朝食を早くしてもらい、ご飯をかき込む。

つい美味しくてお代わりまでしてしまった。



7時15分出発。

ゲレンデを登ると、崖にはシラタマノキの可愛い実が沢山なっている。

この白い実の様に見えるのは萼で、本当の実はこの中に入っている。

昨年蔵王のゲレンデでも沢山見かけた。



なんとアカモノの花が咲き残っていた。

シラタマノキはアカモノが赤い実を付けるのに対して白い実を付けるのでシロモノと呼ばれている。

可愛いなあ!!



エゾリンドウやホソバノママハハコが朝露に濡れている。



緩やかなゲレンデを黙々と登る。

振り返るとホテルが見下ろせる。

その向こうにデンとそびえているはずの笠ヶ岳はガスの中。



15分ほどで前山の頂上に着く。此処までリフトで登る事が出来る。



ここは前山湿原。



草紅葉が美しい。



5分ほどで渋池に着く。

綺麗な池だ。



渋池の向こうには横手山がシルエットになっている。



白樺の黄葉は昨夜来の風で殆ど散っている。

残念。



この山は紅葉は少ない。

少しばかりのナナカマドの黄葉。

道端には所々に鐘が吊してある。

熊ヨケの為に鳴らして通る。



立派なコメツガの大木が多い。



7時58分、志賀山への分岐を左へと行く。

湿原地帯となっており木道を行く。



白樺の紅葉が美しい。

白樺の黄葉を見たのは初めて。少しばかり感動する。



昨日までの雨で登山道は小川になっている。

ジャブジャブと渡るしかない。

突然岩場の厳しい登りとなる。



ふと振り返ると今日登るはずだった笠ヶ岳の厳しい山容がガスの間から覗いている。

あの岩を登りたかったなあ!





この志賀山は志賀高原を造った火山で珍しい渦巻き火山流で出来ているという。

標高も低く見かけもたいしたことはないが思いの外、岩だらけで厳しい。

ここで、右腹が痛くなった。

おまけに咳が出て頭も痛い。

朝食を急いでかき込んだのと、昨日の寒さと、日本酒の飲み過ぎが祟った様だ。



家内に言うと怒られるので我慢して登る。

眼下に御釜池が見える。

8時40分ピークに出る。

五葉松のピーク。

ここの木々の間から日本アルプスが見えるはずだがガスの中。



ピークから少し行くと狭い志賀山山頂。

登山靴とズボンの裾は泥でグチャグチャ。



三等三角点がある。

標高2036m



ガスの為遠くは全く見えない。

麓はあんなに晴れていたのに山の天気は解らない。残念だ。



此処から急坂を下り裏志賀山に向かう。

志賀の小池が眼下に見えてくる。

可愛い池だ。



チシマザサの素敵な道が続く。

尾根の北側には志賀高原のホテル街がガスの切れ間から覗いている。



今の時期花はほとんど無いが、初夏には沢山の花が咲くらしい。



ドンドン下っていくと右下に鬼の相撲場の池

変な名前だね。



鞍部から志賀山を振り返る。

半分岩で出来た変な山。

これが渦巻き火山流?



登り返していくと9時13分四十八池湿原と裏志賀山の分岐に着く。

右下には四十八池の湿原。そしてその向こうには鉢山更に奥には横手山がそびえている。



眼下の四十八池湿原に見とれる。



山裾に目をやると青さが目に鮮やかな沼が見える。

これが噂の大沼池か?

急いで登ると、二組の夫婦連れが降りてくる。

裏志賀山の頂上には志賀神社の祠がある。



頂上を過ぎて水たまりの中を更に行くと通行止めのロープがある。

一寸失礼して下ると、目の前に大沼池の素晴らしい姿が..

素晴らしさに感動するが、少し色がくすんでいる様。

ガスで太陽の光が遮られている所為だろう。



一瞬ガスが晴れると、何と目の覚める様なコバルトブルーに輝いたではないか!

雲の流れと光線の具合で、微妙に色合いが変わっていく。

家内と二人でその素晴らしさに見入ってしまう。



この大沼池は強アルカリ性の為生物は殆ど住めない。

木々の緑と紅葉と池のコバルトブルーの色合いのコントラストが素晴らしい。

湖畔には遊歩道が整備されている。



向こうに見えるのは寺子屋峰

9時29分下山開始。

右下に黒姫池が見える。

本当に池や沼の多い所だ。



少し急だが志賀山の下りに比べるとラクチン。

この時間になると大勢の人が四十八池湿原から登ってくる。

みんなホテルの人に言われたのか熊鈴を鳴らしてくる。

中には「熊はいませんでしたか?」と聞く人もいる。

「蹴飛ばして追っ払っておきました」と応える。






この山では珍しい楓の紅葉。

向こうに見えるのは赤石山



9時54分志賀山神社の鳥居に出る。

ここから四十八池の湿原が広がる。

続く